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「ほうもん看護」に掲載されました📖

日本訪問看護財団よりほうもん看護5月号に高橋 京子執筆の記事が掲載されました。


以下記事です。


地域での訪問看護の価値を広める

 花みずきナースステーションの取り組み

  株式会社花みずきナースステーション 代表取締役 高橋京子


■本人も、家族も、ご近所も

 最近、他機関から依頼があった際に当事業所の印象を尋ねたのですが、「本人丸ごと、家族丸ごと、ご近所丸ごと面倒を見てくれるところ」との答えが返ってきました。なぜそのように捉えられているのか皆で考察してみたところ、本人はもとより家族も同様に対象者・主体として捉え、その方々が住み慣れた地域も元気であってほしいという気持ちがスタッフに根付いているからではないか、という意見が出ました。

 私たちは、日々それぞれの思いが詰まった住まいを訪問しては、幸せを揺るがす課題の小さな種までも見逃すことなく気づき、その解決のために尽力しています。しかし近年、療養生活の背景はますます多様化しており、ニーズも多岐にわたりかつ複雑化している現状を痛感することがしばしばです。

 その為、場合によっては、問題解決のために訪問看護師の力だけでは及ばないことも多くあり、本人に関わっている人々や必要と考えられる人々をしっかり巻き込んで、その人に適したチームを作りアプローチしています。


■連携が生む信頼

 外部との連絡・調整・協働はまさに頭脳戦であり、専門性を尊重しながら人と人をつなげ、ともに本分を発揮しあうという流れです。誰に、どのようなタイミングで、どのような形で介入してもらえば期待する効果を生み出せるのか、所内では日常的にカンファレンスで検討が繰り返されています。

 一般に訪問看護師には現場を重視する傾向がありますが、こと連携に関しては、「机の上でする仕事」という側面が大きいと考えています。また、訪問看護師が調整役を担うからこそ、ケアの意味付けや協力方法等について説得力をもって伝えられるというメリットもあります。

 時にはケアマネジャーと一緒にこの連携作戦を立てることも多く、その実践の結果として互いの信頼が生まれていきます。その結果、友好的に協力してくださる事業所が増え、業務の円滑な遂行に大いに役立っています。人的ネットワークの広がりは、当事業所の宝物です。

■他施設との協力

 当事業所は現在、4か所のグループホームと契約しており、看護と介護が一体となって日常生活の支援から看取りまで実践しています。これは双方のスタッフにとって成長のための貴重な機会となっています。その他にも、小規模多機能事業所と一緒に看取りをしたり、デイサービスから看護師代行の依頼を受けたりと、様々な場面で訪問看護の力を発揮することがあり、そのたびに寄せられる期待の大きさを実感しています。

 限られた社会資源の中で利用者のQoLの向上を目指していくためには、同じ屋根の下でなくても、訪問系、通所系、入所系が一体的にサービスを提供することで、複合型サービスに近い効果を期待できると感じています。その際にも、シームレスにケアをつなぐ役割は訪問看護が担うこととなります。


■地域とともに歩む

 ある日、団地に住む認知症高齢者宅の訪問を終えて出てくると、団地の代表の方が待ち受けておられました。「認知症は誰もが行く道ですよね。私たちにできることはありませんか」と声を掛けられ、ゴミ出しは代わってやってあげた方がいいのか、それとも一緒に出しに行くほうがいいのかなど、生活の場を共にする人ならではの質問を受けました。このことをきっかけにチームとして見守ってくださる方が加わり、公民館での勉強会まで発展しました。

 このように、ご近所の方はサービスの介入をご存知であり、その効果の良しあしも身近なこととしてしっかり伝わっているのです。この点、当事業所は口コミでの紹介が多く、数年前や十数年前に利用されていた方のご家族から再び依頼をいただくケースもあり、何よりの評価と喜んでいます。

 私たちの事務所には、普段の業務以外にもいろいろな人が訪ねられます。庭の畑で咲いたお花をいただくこともあれば、ボランティアで庭の手入れをしてくださる人や、「亡母の話をできるのがうれしいです。ずっとこの場所にいてください」と、年1回決まって都会から帰省してこられる方までいらっしゃいます。

 訪問看護を入り口として、地域と一緒に生きている感覚やお互い様という意識を、スタッフ全員が身をもって体験しています。


■会議や研修会の機会を活かす

 これまで多くの組織や人を巻き込んできた経験を買われて、公的機関から様々な会議への参加を求められることも増えてきました。そのようなときは、在宅療養者や家族・地域の代弁者として政策への提言を行うとともに、訪問看護の意義をわかりやすく正しく伝えるよう努めています。

 他にも、研修会の講師の依頼をいただくこともあります。とりわけ公民館単位の研修では、日常生活の中でできる予防法や健康づくりを紹介すると、訪問看護師に教わるからこそ具体的で実践しやすいとの意見を多くいただきます。ここからまた人との出会いが増え、相談や紹介につながっています。


■訪問看護の存在意義を高める

 当事業所も所属する島根県訪問看護ステーション協会松江支部では、7年前より活動を強化してきました。全体の質を底上げすることと、訪問看護難民を出さないよう職能として団結することを目的に月1回の定例会を開催し、事業所の所長間では何でも相談できるという意識が定着してきました。

 また、3年前に市内7病院の退院調整看護師たちと立ち上げたナースネット松江(NNM)では、スムーズな入退院移行を目指して話し合いを重ねています。共同作成した連絡票は、地域でも周知のツールとなっています。

 このような努力の甲斐あって、公的機関との連携や交渉も円滑に進むようになりました。その大きな成果が、今年2月に島根県訪問看護ステーション協会松江支部が松江市と結んだ「災害時における指定福祉避難所の運営の協力に関する協定」です。この協定は、市の開設する避難所に看護師を派遣するもので、要配慮者への対応について訪問看護師の知識・経験が評価されて締結の運びとなりました。


■みんなで寄り添い、守る

 ていねいで的確な連携スキルは効果を生み、確実に利用者のQoLの向上に結び付きます。

 私たちには人のためにできることがある――そのことが何よりもの喜びになっています。







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